BOOK SHOP にのみ屋 今月のオススメ本 ~『父からの手紙』~

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「父からの手紙」(著:小杉健治)光文社文庫


今月のおススメ本は長編小説にしてみました。
私自身、高校生になる子を持つ1人の父親として、
今だからこそ我が子に何を伝えられるのか、
何を指し示してあげられるのか。
そんなことを思っているときにこの本に出会いました。
本書は、2003年7月にNHK出版から刊行されたものを、
2006年3月に文庫にしたものです。
刊行されてから10年近くが経ちますが、今読んでも大変に面白く、
父親が持つ家族への絶対的な愛、その「魂の叫び」を感じずにはいられません。
親と子の絆が、父から我が子への「手紙」という形をとって表現されています。
その手紙の一節に、こう記されています。
「人間の幸福は何事にも平穏無事に過ごすことではありません。
そこには喜びも、そして自分自身の成長もありません。
人生には必ず困難が立ちふさがります。
それは避けて通れません。
人間の幸福は試練を乗り越える強い心を持つことにあると思います。
どんな困難にも怯むことなく、
勇気をもって立ち向かって行ってください。行動あるのみです」
人間の幸福は、平穏無事に過ごすことではない。
ましてや財産や地位、名声などを得ることでもない。
試練を乗り越える強い心を持つことである。
とても重く、深いメッセージではないでしょうか。
自分自身の幸福観をどこに置くのか、どう覚悟するのか、
それ一つで、人として生きる意味は大きく変わってくるのです。
覚悟を決めたら、どんな困難や試練にも怯むことなく、
勇気をもって立ち向かう。
人生とは、そうした生き様を通して初めてそこに価値を持つのではないでしょうか。
この本を読んでみて、私自身、そんな人生にしたいと強く思いました。
尚、本書は哲学書でも自己啓発本でもなく、小説です。
その中核をなす「手紙」自体にミステリーの謎が仕込まれています。
ぜひ、ご一読ください。
にのみ屋