先月の21日に2回目の緊急事態宣言が解除されたばかりかと思いきや、4月25日には3回目の緊急事態宣言がなされた。
様々な活動に制限がなされるわけだが、自身はこの2度目のコロナ禍GWも完全に割り切り、むしろプラス思考で捉え、読書やオンラインでの学びを深めようと心に決めた。
自身の読書傾向を踏まえて、「これ買いなよ!」と日々アクションを投げかけてくれるAmazonは、もはや頼れる相棒である。
今回も相棒からの導きで、とても良い書籍に巡り合うことができた。
なによりサブタイトル~知識の「幅」が最強の武器になる~に惹かれた。
これまで我が国には世界一と呼ばれる分野や企業がいくつもあったわけだが、世界時価総額ランキングによればすでにトップ50にはトヨタ自動車がいるだけになっている。
逃れられない少子高齢化社会においても唯一勝負できる可能性のあるIT化もDXも会議がWEBでやるようになっただけで、思うように進んではいない、と肌感覚で感じているのではないだろうか。
参考に世界時価総額について、分かりやすく表にされている方がいらっしゃったので掲載させていただく。
世界の時価総額ランキング【アメリカ1強時代と日本の順位】 | Jason Shin Blog
https://jasonshin.blog/world/ranking/ranking-market-capitalization-2021/
そこに飛び込んできたのが本書「RANGE」である。
冒頭に生まれたときからゴルフの英才教育を受けてきたタイガー・ウッズと、幼少期はスキー、レスリング、バスケットボール、ハンドボール、サッカーを経験し、今やテニス世界ランキング1位のロジャー・フェデラーについて描かれている。
ウッズは「意図的な練習の量で成功が決まる」という考え方を象徴する人物であり、フェデラーは幅広い経験の中で身体能力を育み、ナンバーワンに君臨する人物である。
このプロセスの違いが「レンジ」を見極める入り口だ。
このとらえ方を前提に様々な研究や事例を用いて、レンジの見極めが表現されている。
例えでいくつかを抜粋させていただく。
「ある研究は、早めに専門を絞り込んだ人は、ゆっくり専門を極めた人より大学卒業後しばらく収入は高いが、ゆっくり専門を決めた人は、より自分のスキルや性質に合った仕事を見つけられるので、じきに遅れを取り戻すことを示していた。
また、多くの研究が示唆しているのは、テクノロジー開発において、様々な分野で経験を積んだ人のほうが、ひとつの分野を深めた人よりも、クリエイティブで影響力の大きい発明ができることだった。
キャリアの中で積極的に深さを犠牲にして幅を広げ、成功していた人たちがいた。」
「1979年に、クリストファー・コノリーは心理コンサルティング会社をイギリスで共同設立した。
優秀な人達がベストの成果を上げられるよう、コンサルティングするためだ。
年月を経てコノリーが興味を抱くようになったのは、自分の専門外に出ると苦労する人がいる一方で、キャリアを外に広げるのがうまい人もいることだ。
「その彼らは8車線の高速道路を走っていた」とコノリーは記す。
一車線の一方通行の道ではなかった、彼らには幅(レンジ)があった。
成功した人たちは、ある分野で得た知識を別の分野に応用するのがうまく、また、「認知的定着」を避けるのも上手だった。
彼らはつまり、外部の経験や例を活用して、もはや効果がない従来の解決方法に依存する傾向を遮断していた。
彼らは、昔ながらのパターンを「避ける」スキルを持っていた。」
「著者の大好きな村上春樹はミュージシャンになりたいと思っていた。でもあまり楽器がうまくなかったと村上は言う。
東京でジャズバーを経営していた29歳の春、野球の試合を観に行き、バッドの音を聞いた。
「美しく、響き渡る二塁打」だった。
それを聞いて村上は、「自分は小説を書ける」と思った。」
Y Combinator 創業者ポール・グレアム氏のコメントが、現代においてウッズタイプとフェデラータイプ、ビジネスマンがとらえるべき方向性はいずれなのか、明確に示してくれている。
「自分が何をしたいのかは、分かる気がします。でも、本当はとても難しい。その理由のひとつは、仕事の正確な姿を知るのが難しいからです…私が過去10年間にしてきた仕事の大半は、高校生の頃には存在していませんでした…このような世の中で、計画をガッチリ固めてしまうのは、賢明ではありません…先の目標から逆換算して歩き始めるのではなく、今有望な状況からスタートして、前に進んでいきましょう…」
解説で中室氏が表現されているように、ゴルフやチェスのように明確なルールがあり、経験をパターン化でき、直ちに正確なフィードバックが受けられる場合には、早期教育や狭い狭い専門分野に特化してもよいのかもしれない。
けれどもそうではない大多数の領域では多様な経験を通じた「寄り道」や「試行錯誤」が重要で、それは省略できるものではなく、むしろ不可欠なものだという。
今決めたゴールが10年後あるとは限らない。
縦と横の糸を紡ぎ合わせるかのように経験と幅を深めていくこと。
DX人材、イノベーション人材の入り口見っけ。
■参考サイト
デイヴィッド・エプスタイン: アスリート達は本当により速く、強くなっているのだろうか? | TED Talk
https://www.ted.com/talks/david_epstein_are_athletes_really_getting_faster_better_stronger?language=ja
タイトル:RANGE 知識の「幅」が最強の武器になる
著 者:ディビッド・エプスタイン
解 説:中室 牧子
翻 訳:東方 雅美
発 行:2020年3月26日
発行所 :日経BP社