BOOK SHOP にのみ屋 今月のオススメ本 ~『見えない糸』ローラ・シュロフ&アレックス・トレスニオウスキ ~

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「見えない糸」   著:ローラ・シュロフ&アレックス・トレスニオウスキ (海と月社)


 

新聞社の広告営業エグゼクティブとして活躍するキャリアウーマンのローラと、
幼い頃から薬物と暴力の中で育ち、物乞いで日々をしのぐ6歳の少年モーリス。

この時だけは何かに引かれるように立ち止まり、振り返るローラ。
この2人の出会い。それは偶然なのか、必然なのか。奇跡なのか。
2人の人生はこの時を境に大きく動き出します。
この話は、1980年代のニューヨークで本当にあった話です。

ローラ・シェロフ。周囲には言えない父親の暴力、その苦しみを優しい母と
小さな姉妹で耐え続け、母の大きな愛だけを支えに幼少時代を過ごしました。
その母の死を境に、自身でも離婚を経験し、家族の愛とは無縁の中で
仕事に打ち込んできました。そんな彼女の繰り返される日常の前に、
道端に座り込み、物乞いをする少年モーリスが現れます。

普段であれば物乞いに足を止めることも、気にすることもなく通り過ぎるはず、
通り過ぎてしまえば、何てことのないよくある風景・・・・。
しかしこの時だけは、何かに導かれるようにローラは立ち止まり、踵を返します。

「マクドナルドでもどう?」その一言から、この「見えない糸」は動き始めます。

貧しい日々を過ごしていたモーリス少年にとってはもちろんのこと、
ローラにとっても欠かせない人との出逢いとなりました。

読み進めるごとに、偶然では済ますことの出来ない2人の絆が、
お互いの幸福を願うが故の葛藤を繰り返す中で、太く確かなものであることが感じられ、
人は誰に出逢うかで、人生はまったく違ったものになることを教えられます。

モーリスが暮らす街。そこで生きる多くの人が薬物、暴力に埋もれ、
家族のほんの少しの愛にさえ飢え、過酷な人生を歩み続ける世界が現実にあります。
モーリスはローラからとても大きな愛を注がれ、「人間としての正しい生き方」を学び、
自らの進む道を模索し続けます。
この出逢いがなければ、1人の少年は暗く荒んだ世界の中で埋れていたことでしょう。

「見えない糸」。
それは私たち一人ひとりにも間違いなく結ばれているはずです。
縁を大切に、出逢いに感謝し、日々を命懸けで生きたいと思わせてくれる一冊です。
ぜひご一読ください。

にのみ屋