2019年12月のさと、うま 人口減少社会のデザイン@広井良典

著者は京都大学こころの未来研究センター教授である、広井良典氏。
数々の社会問題や政策、環境、まちづくりなどにかかわる著書もとても多い。
さらにAIによる我が国の未来シナリオとして「都市集中型」か「地方分散型」か、または氏の唱える「高度成長期の成功体験がいまだに【経済成長がすべての問題を解決してくれる】という世界観から抜け出すことができない」という考え方には共感する。

本書はタイトルの通り、もはや抑えきれない人口減少社会においての政策が、数字や減少、バックグラウンドなども丁寧に描かれており、非常に読みやすく、考えさせられることも多く、とても勉強になる。
この人口減少社会において経済成長が日本を守る答えなのか、30年間殆ど変わらないGDPはビジネスマンの踏ん張りで上昇するのか、ひとつひとつに衝撃が走る。

例えとして一部を抜粋させていただく。
『東京は言うまでもなく「経済」や「効率性」という点では圧倒的な〝トップ〟の存在であるわけだが、その東京において出生率がもっとも低く、したがって「人口減少」がもっとも進行しやすい地域であるという点は、ある意味で根本的な逆説を含んでいるのではないだろうか。つまり、経済的な効率性や生産性ということだけを追求すると、短期的には一見望ましいパフォーマンスを上げるようにも見えるが、いくら生産性が上昇しても、出生率が低下し人口減少が進んでいけば、中長期的にはまさに「経済」にとっても根本的なマイナスとなるわけである。』

そりゃそうだ。

ちなみに東京の出生率は1.20で一番低く、沖縄(1.89)、島根(1.74)、宮崎(1.72)鹿児島(1.70)と西日本に出生率の多い県が集中している。
参考:厚生労働省 平成30年(2018)人口動態統計月報年計(概数)の概況
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai18/dl/kekka30-190626.pdf

ちなみにあるサイトによれば、宮崎、沖縄、島根、鹿児島などはともに平均年収は低いとある。
参考:【都道府県別年収ランキング】地域間格差が明確にわかる|年収ガイド
https://www.nenshuu.net/prefecture/pre/index_prefecture.php

出生率と経済事情は明らかに反比例している。

2019年12月20日、総務省から人口推計が発表されました。

<総人口> 令和元年12月1日現在(概算値) 1億2615万人で,前年同月に比べ減少 ▲28万人

2010年の総人口確定値は1億2805万人であるから、約190万人の減少だ。
総人口ではなく日本人人口でいけば、2010年の確定値の1億2638万人から、2019年7月確定値の1億2388万人と約250万人の減少である。
この数字は京都府の全人口約258万人に匹敵する。

改めて、この国はどうなってしまうのだろうと考える。

しかし一方で氏はこのようにも述べている。
・・・以上のような時代の構造変化に関わることだが、私自身がここ10年くらい感じてきたこととして、「若い世代のローカル志向」という点がある。すなわち、ゼミの学生などに接する中で、たとえば静岡のある町出身の学生が、〝自分が生まれ育った町を世界一住みやすい町にする〟ことが自分のテーマだとか、新潟出身の別の学生が、地元の農業をさらに活性化するのが自分の関心事だとか、さらに別の学生が愛郷心を卒論のテーマにするとか、こういった傾向が私にとって意外に思うほど目立つようになってきている。あるいは、もともとグローバルな課題に関心を向けていた学生が、留学をへて、むしろ日本の国内にこそ多くの課題や問題が存在していると感じるようになり、ローカルな地域や地元での活動に関わったり仕事につくといった例も増えている。

私にできることは何か。
真剣に考えることができた一冊。

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■参考サイト
参考:総務省統計局ホームページ/人口推計(令和元年(2019年)7月確定値,令和元年(2019年)12月概算値) (2019年12月20日公表)
https://www.stat.go.jp/data/jinsui/new.html

広井 良典 YOSHINORI HIROI | 現代ビジネス
https://gendai.ismedia.jp/list/author/yoshinorihiroi

2018年8月のさと、うま 縮小ニッポンの衝撃@NHKスペシャル取材班
https://search.sunfrt.co.jp/blog/staff/yby/p11528/

2019年8月のさと、うま 未来の地図帳@河合雅司 | サンブログ
https://search.sunfrt.co.jp/blog/staff/yby/p13088/

タイトル:人口減少社会のデザイン
著  者:広井 良典
発  行:2008年11月14日
発行所 :株式会社講談社

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