「基本給の内払い」「みなし残業代」とも呼ばれることがある固定残業代。
最近では、固定残業代を採用している企業も増えています。
近年のワークスタイルは多様化しており、固定残業代の導入も、多様化への対応のひとつだと言えるでしょう。
固定残業代は雇用主・従業員の双方にとって便利なものですが、場合によっては複雑な手続きが発生することもあります。
固定残業代とは?
固定残業代は、「毎月の給与(基本給)に、あらかじめ残業代が含まれている」というシステムです。
従業員にとっては「一定時間の残業をしなくても同額の給与が得られる」というメリットがあります。
たとえば、基本給に含まれている固定残業代は、残業30時間分だとします。
もしも従業員の残業時間が30時間に満たないとしても、あらかじめ決められた残業代を含む給与が支払われます。
従来の残業は「残業した分を計算して基本給に加算する」という仕組みでしたが、固定残業代は最初から決まっているため、年間の人件費が把握しやすくなることと給与計算の手間を省ける一面があります。
業務の効率化にも繋がりますので、雇用側にとってもメリットがあるシステムでしょう。
固定残業代を超える残業が発生した時は?
固定残業代は「あらかじめ決められた残業時間」、いわゆる「みなし残業」に対する残業代です。
気になるのは、「みなし残業を超えた残業時間」が発生した場合ではないでしょうか。
例として、みなし残業が月30時間だとして、繁忙期に月32時間の残業が発生したとします。
「固定残業代は30時間分だから、2時間分は諦めなきゃ…」と考えてしまうかもしれませんが、その心配はありません。
雇用側は、みなし残業を超えた残業時間(この場合は2時間)分を新たに計算し、給与へ反映させる義務があります。
この手続きが案外煩雑になることもあり、雇用側や経理を担当する従業員は注意が必要です。
従業員のモチベーションアップになることも
固定残業代は従業員のモチベーションアップや、業務の効率化へ繋がる可能性があります。
同じ業務をしても従業員によって残業の有無が違うとなると、業務が遅い人や残業代目当てで業務を遅らせる人が残業代をもらえるということになり、定時に業務を終わらせる従業員の中に不公平感が発生しやすいものです。
しかし、固定残業代では従業員は残業をしなくても同額の給与が得られるため、「残業にならないように業務を終わらせよう」と考えるようになります。
仕事へのモチベーションが上がり、業務効率も良くなるという、二重のメリットが期待できるのです。
ただ、あまり残業が発生しない業種に固定残業代を採用すると、経営を圧迫する可能性が生まれます。
そのような企業は、固定残業代より、従来の残業代の計算方法が向いているでしょう。
業種によって向き・不向きのある固定残業代ですが、適している業種なら、思わぬ業務効率化に繋がるかもしれません。