相手に対して不快な感情や不利益を与える迷惑行為「ハラスメント」は、心身に深刻なダメージを与えるおそれのある社会問題の一つです。
ハラスメント問題が起きると、企業としてのイメージダウンはもちろん、業績の低下や人材の流出につながるなど、その損失は計り知れません。
職場においては「パワハラ」「セクハラ」「マタハラ」が特に問題となっており、企業は事業主として責任ある対応が求められています。
職場での三大ハラスメント
職場とは「労働者が業務を遂行する場所」を指し、通常就業している場所以外であっても、労働者が業務を行っている場所であれば「職場」に該当します。
職場で起こるハラスメントで代表的ともいえるのが、以下の3つです。
パワハラ(パワーハラスメント)
職場での地位や権力などの優位性を背景に、業務上必要かつ適切な範囲を超えた言動で、労働者に精神的・身体的苦痛を与えることをいいます。
パワハラの対象となる言動は大きく分けて6つに分類できます。
- 身体的な攻撃
- 精神的な攻撃
- 人間関係からの切り離し
- 過大な要求
- 過小な要求
- 個の侵害
実際にパワハラに該当するか否かの判断基準は、言動が行われた経緯や状況、行為の継続性などによっても異なり、上記の分類に当てはまらないケースのパワハラも存在します。
セクハラ(セクシャルハラスメント)
職場におけるセクハラには「対価型」と「環境型」の2種類があります。
対価型
意に反した性的な言動を受け、拒否や抵抗などの対応をしたことで、解雇・降格・減給・労働契約の更新拒否・昇進の対象からの除外といった直接的な不利益を受けること
環境型
意に反した性的な言動から職場環境が不快なものとなり、能力の発揮に重大な悪影響が生じるなど、就業する上での支障が生じてしまうこと
異性だけでなく同性に対するものも該当し、取引先や顧客なども行為者や被害者になりえます。
妊娠・出産・育児休業などに関するハラスメント
代表的なものに、妊娠・出産したことや育児休業などの制度利用に関して、女性労働者が上司や同僚に嫌がらせを受けたり、就業環境が害される「マタハラ(マタニティーハラスメント)」があります。
男性労働者の育休取得や時短勤務などに対する嫌がらせ行為を指す「パタハラ(パタニティーハラスメント)」という言葉も、最近ではよく耳にするようになりました。
また、このカテゴリには、働きながら介護をする労働者に対する嫌がらせ行為、「ケアハラ(ケアハラスメント)」も含まれています。
ハラスメント対策は事業主の義務
近年、職場でのハラスメントを防止するための法改正も進んでいます。
2020年6月1日に「改正労働施策総合推進法(通称:パワハラ防止法)」が施行され、大企業の事業主にパワハラへの防止措置が義務づけられました。
努力義務とされていた中小企業に対しても、2022年4月1日より義務化が適応されています。
セクハラに関しては、2007年に改正された「男女雇用機会均等法」で、妊娠・出産・育児休業などに関するハラスメントについては、2016年に改正された同法及び「育児・介護休業法」にて防止措置が義務づけられています。
具体的には以下のような措置が定められており、事業主はこれらについて必ず講じなければなりません。
- 事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
- 相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
- 職場におけるハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応
- 併せて講ずべき措置(プライバシー保護、不利益取扱いの禁止など)
多様化するハラスメント問題
上記に挙げたハラスメント以外にも、職場ではさまざまな種類のハラスメントが認識されるようになっています。
気がつかないうちに「○○ハラ」と呼ばれる行為をしている場合もあるため、定期的にハラスメントに関する研修や講習会を行い、労働者一人一人の意識を高めていくことも必要でしょう。