吉田松陰や坂本龍馬が教科書から消えるという記事。
実際の歴史上の役割や意味が多くない、覚える単語が多すぎ、
暗記中心になっている試験は問題だなど、業界団体等で議論となっているらしい。
一方で新たな文献や古文書が発見され、読み解かれ、史実が変わっているものもある。
いいくに(1192)つくろう鎌倉幕府、覚えたな―。
けれど今は1185年が鎌倉幕府の設立。
「歴史を紐解く」とよく言われるが、あばかれ、
事実が少しずつくつがえされていく事象はとても楽しい。
本書に戻り織田信長。
信長について以前から気になっていたことがありました。
傾奇者、破天荒、天下布武、そして本能寺の変により一生を終えますが、
なぜ延暦寺を焼き討ち、本願寺と戦う必要があったのか。
寺社とは絢爛豪華な仏閣や社殿を建築し、修行を行い、教えを広めていった…
程度の認識の私には、戦う意味が分かりませんでした。
本書のサブタイトルは、貨幣量の変化から宗教と戦争の関係を考察する。
お金の流れから「歴史」を読み解くということが新鮮で惹かれました。
奈良時代に農地開墾をはかるために土地の私有を認めたことにより荘園が興る。
鎌倉時代に荘園や地域を管理する守護・地頭が置かれ、
次第に荘園を傘下に力をつける者が台頭してくる。
戦乱の時代、ばらばらだった荘園は、自己防衛のために村単位で集まり武装する例が見えてくる。
斯波氏、畠山氏、細川氏、山名氏、大内氏、赤松氏などが大きな勢力を持ちだす。
将軍家は、それぞれが(有力な)守護大名とつながり、権力争いが盛んになる。
どこが誰に着くか、誰を裏切るか、誰と組んだか…などが多くのページを使い描かれています。
同じく寺社勢力についても詳しく描かれています。
天台宗を興した最澄は比叡山延暦寺、真言宗を興した空海は金剛峯寺、
浄土真宗の親鸞は本願寺といったように、宗派ができると信者を集めるために寺社仏閣の建築を行う。
寺社は境内といわれる敷地を形成するため、寺内町など、人が集まり、市が立つようになる。
東京タワーのたもとにある浄土宗増上寺は、
浜松町駅に向かう途中にある大門(大門駅の由来)までが境内であり、
以前その付近は門前町、門仲町などと呼ばれていたそうですね。
僧侶を増やし、宗派を増員への布教を繰り返して行く…というところまではわかりますが、
寺社は当時一大勢力となります。
よって荘園領主としても任命され、地域の年貢や管理を行うことに。
結果、城郭(境内)をもち、金銭や人民を掌握、守護同様に宗派と町を守るために
武装や領地拡大をしていきます。
いっぽうの信長。
それまで斯波氏の配下として尾張守護代を務めていましたが、下克上から台頭していきます。
勢力を広げるにあたって延暦寺を焼き討ち、石山本願寺との戦いが起こっています。
そうか!ようやくつながりました。
信長の興した改革のひとつは楽市楽座を開いたことです。
楽市楽座とは既得権益をもつ市座を排除し、
規制を緩和し自由な市場を築いくことになります。
また新兵器の鉄砲をいち早く取り入れ、長篠の戦いで
武田勝頼率いる武田軍を滅ぼしたことも有名です。
それまで農民を戦力としていた各将は
収穫の時期になると戦争ができなかったそうですが、
信長は金銭で兵士を雇い、鉄砲を仕入れ、いつでもすぐに戦争ができる態勢を整え、
それまでの権力者を圧倒していきます。
楽市楽座によりひらかれた市場からあがる収益は
兵士や武器を購入するために必要だったのです。
鉄砲も当時新しかったわけではなく、大量に購入できた戦略があったからということ。
その先は戦乱を終え、自由な商いが盛んになり、
人々が安心して暮らせる天下泰平の世が見えていたのでしょう。
信長の先見性、魅力が深まる一冊になりました。
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タイトル:経済で読み解く織田信長
著 者:上念司
発 行:2017年3月5日
発行所 :KKベストセラーズ
RP さと、うま