2020年4月のさと、うま 21世紀へ@盛田昭夫

新型コロナウイルスが驚異だ。

弊社オフィスもソーシャル・ディスタンス保持、時差出勤、テレワーク、在宅勤務と
急な対応にとまどいつつも、なんとか人と接触せずに働き続ける環境を保持している。
とはいえ「誰かとお会いする」ことが本職、
ここまで誰とも会うことのできない初めての環境には慣れていない。
3件となりのビルにいる業者様とも電話でしか商談できない日が続く。

ふと目にした本棚の一冊、その背表紙に呼ばれた気がして手にとった。
20年前に発行されたこの本。
どんな内容だったかなぁと思いながら、表紙、裏表紙、帯にと目をうつす。

環境は刻一刻と変化している。
これまでやってきたことも、今やっていることも、全て正しいわけではない。
時代、時代に求められる発想が大切で、そのためには10年先を考える必要がある。

このように書かれていた。

それが今回ご紹介する「21世紀へ」である。
著者はSONYの創業者である盛田昭夫氏。
本書あとがきにあるように、生前に発表された著作物、講演録、
テレビインタビューから社内スピーチに至るまで、入手可能な資料・発言を収集。
この膨大な資料の中からエッセンスを生成し、構成編集を行われたもので、総数約400ページ。
とはいえ、いくつもの章にわかれているので読みやすい。

敵を知り己を知る
最大関心事は社員の幸福
アイディアを実行する勇気
欲のない人間は願い下げだ
ビジネスは団体競技

気になるページを掻い摘みながら思い出していると、
第8章「日本国家への期待」にたどりついた。
そして何度か読み返した。
長くなるが、今このときに、とても感銘を受けたので抜粋させていただく。

日本人は環境の変化にマヒしている。
こんな事は言いたくない。
書きたくない。
これが本音である。
第一、これは私の領分ではない。
私はビジネス一筋にやっていきたい。
しかし、そうは思いつつも、もう黙ってはいられなくなってしまった。
このままでは、我々の国「日本」はどうにかなってしまう。
こう感じるのは、今や私1人ではあるまい。
つい24年前、日本の都市・工業地地帯は焼け野が原であった。
日本の半分近い人たちは、それを覚えているはずである。
あの荒れ果てた焦土の中で、ともかく、その日その日の暮らしを建て始めてから、
食糧難を超え、資材の欠乏と闘い、資金の不足に悩みながら、
とうとう、世界で第二の工業国にのし上がったのである。
世界の奇跡と呼ばれるこの復興をやり遂げるには、
産業に携わる多数のサラリーマンの苦労が
最も大きな力となった事は言うまでもない。
すなわち、産業人がこの日本国を立て直したのだといっても
言い過ぎではないと思う。
その、我々産業人すべての、汗と苦しみの成果である日本国が、
国の経営力である政治力の貧弱さのために、
根本からひっくり返ってしまう恐れが、だんだん大きくなってくるのを感ずるとき、
建て直しに片棒をかついだ産業人の1人としても、黙っていられないのである。

人間というものは不思議なもので、大変に危ない立場にあっても、
自分だけは大丈夫と言う妙な安心感が持てるものだ。

弾丸の飛び交う戦場ですらそんな気持ちを持つものらしい。
また、恐ろしい事態にぶつかったり、危ない橋を渡る時なども、
初めは肝を潰すけれども、すぐに、そういう環境に慣れてしまうものであるらしい。

それは、順応性があるからだと言ってしまえば、それきりのようであるが、
刺激に対して、すぐにマヒしてしまって、往々にして、
重大な環境の変化にも気づかないことに通じるのだ。

取り返しのつかない変事が起きるまで、
何の準備も対応策も立てずに終わる結果となるのである。

特に、まわりがじわじわと少しずつ変わっていくことには、
なかなか気がつかないものであるし、何かことが起きても、
その結果は悪い方へは行かないだろうと信じたい気持ちが働いて、
改まって注意体制を取るなどということをしたがらないのが人間である。

この性向は、日本人にはとりわけ目立つ。

私はまだ中学生だったが、五一五事件や二二六事件の起きたころ、日本の大多数の人たちが、
何か変化がジリジリと日本に置きつつあると言う事は感じながら、
「まぁ、悪い方へは行かないだろう」「たいした事にはならないだろう」と自分で自分を安心させて、
何の積極的な行動も取らないうちに、とうとうあの戦争に突入してしまった。
その戦争も、負けた歴史を持たない日本軍は「負けるはずがない」と信じたり、
「いつか神風が吹くだろう」と妙な希望を抱いたりしているうちに、
惨敗となってしまった。
我々の父親たち、祖父たち、さらにその先代が、西欧に追いつけ追い越せと、
汗水流して作り上げた大日本帝国を、とうとう無残な敗土にしてしまったのである。
大日本帝国は滅びて当然でもあった。
それなくして民主日本の建設はあり得なかった。
だが、これはまた別の議論に属する。
近頃の、わが国の状態を見ていると、
私には、前と同じことがまた起きるのではないかと言う気がしてならない。
何だか知らないが、国全体を押しつぶすような大きなものが、
じりじりと近寄って来つつあるような気がしてならない。
すでに、その前触れと思われる、いろいろな事件や問題がいくつも出てきているのだが、
もう日本人全体がそれにマヒしてしまっている。
または、「まぁ、悪い方にはいかないだろう」「たいした事はあるまい」と、
持ち前の楽観性でタカをくくっている。
本気に心配して、何かをやろう、と立ち上がる気にはとてもなっていないようだ・・・

この一段は1969年に書かれているので、50年前の記事である。
盛田氏の50年前のこの感覚は、時代や事象は違えど、なにか今の環境にピタリとあてはまりすぎてゾッとした。

とても胸がいたい。

何かことが起きても、その結果は悪い方へは行かないだろうと信じたい気持ちが働いて、改まって注意体制を取るなどということをしたがらないのが人間である。

昨年、日本はとてつもない豪雨、台風、地震に何度も侵食された。
昨年の被害が多かったから、今年はこないでしょ・・・と思いたいが、実際はそうはいかないでしょう。
だから常にビビリをもって生きていこうということを改めて考えさせられた。

STAY HOME!
SOCIAL DISTANCE!

まずはもう一歩、みんなで踏ん張ろう。

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■参考サイト
盛田昭夫 | NHK人物録 | NHKアーカイブス
https://www2.nhk.or.jp/archives/jinbutsu/detail.cgi?das_id=D0016010020_00000

2019年(令和元年・平成31年)地震・大雨などの自然災害一覧まとめ | ソナエテ
https://bousai-irumono.com/2019natural-disaster/


タイトル:21世期へ
著  者:盛田昭夫
発  行:2000年11月21日
発行所 :ワック株式会社

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