2017年3月のさと、うま 新・観光立国論@デービッド・アトキンソン

2017年3月のさと、うま 新・観光立国論@デービッド・アトキンソン (427x640)

日本の観光に大きな波が押し寄せています。
1990年台には300万人程度だった訪日外国人客数は
2015年に1937万人、2016年には2403万人、2017年はすでに2月までの統計が
前年比で15.7%増ということもあり、おおよそ2700〜2800万人ではないかと想定されています。

政府は2016年3月30日に「明日の日本を支えるビジョン」として、
訪日外国人客数を従来目標より2倍増の目標を策定いたしました。
2020年 4000万人(従前2000万人)
2030年 6000万人(従前3000万人)

めざせ!観光立国。
としたこのビジョンには3つの視点があげられています。

視点1 観光資源の魅力を極め、地方創生の礎に。
視点2 観光産業を革新し、国際競争力を高め、我が国の基幹産業に。
視点3 すべての旅行者が、ストレスなく快適に観光を満喫できる環境に。

イノベーションを興し、新たなサービスをつくり、リピートを増やすといった大きなビジョンは、
宿泊施設の所有と運用を行う私たちにとっても、意志ある目標であると感じてなりません。

自身も外国籍の方々と過ごす時間が大幅に増え、
外国籍の方々むけのホステルもスタートしたことで、
日本の魅力を考える機会が多くなりました。
そこでこちらの本をピックアップ。

著者は、ソロモン・ブラザーズやゴールドマンサックス時代は伝説の金融アナリストと呼ばれ、
20年以上暮らす日本においては茶道の大家である裏千家にて茶名「宗真」を拝受、
現在は文化財や神社修復工事を行う小西美術工藝社の代表取締役社長・・・というイギリスの方。

アナリストであり寺社仏閣の修復にたずさわる著者ははじめにこのように記しています。

人口が減っていく日本は移民を受け入れがたい環境がある、
ならば短期移民を受け入れることでGDPの減少を補い、大きな成長を続けることができる。
その短期移民とは観光立国になること。
観光潜在力ランキングが2008年の第23位から9位へと躍進したが、
観光収入ではランキング上位国と比べ、3分の1程度しかない。
これはまだまだ潜在力が高いということです。
そこで事実を客観的に分析し、何をすべきかを明らかにしていきたい・・・

まずこの段階でなるほど!と思いました。
訪日外国人客数を増やす施策は知っているものの、潜在力があり、観光収入は少ないという事実。
日本の文化を知り、業にたずさわり、プロのアナリストである著者の見解に引き込まれます。
その後は読みやすい内容もあって、一気に熟読です。
とても勉強になりますが、以下は更に気になる項目です。

観光立国の4条件「気候」「自然」「文化」「食事」のすべてがそろう日本なのに、
2つのイギリスよりも観光収入は3分の1。
治安のよさ、交通機関の正確さはアピールにならない。
日本のみなさんが思っているほど「おもてなし」は世界から注目されていない。
価値観や文化の違いを理解していない。
ゴールデンウィークによる観光障害。
京都に来た外国人がリピートするほど絶賛している人は少ない。
観光への国家予算の少なさ。
間違ったガイド、案内表示、コンテンツ不足。

目から鱗が落ちる、といいますが、ハッとさせられました。
宿泊施設を増やすと同時に、本当に喜んでもらい、リピートしてもらえる仕組みがないと
一時的なものになってしまいます。

そのために何が必要かと考えたのですが、まずは日本文化を深く知らないといけない。
私たちもそうですが、海外旅行に行くとなれば事前に調査をします。
それは何かを求めに行くからです。
そして美味しい料理に出逢えば、また行きたい、あの人に教えたい、一緒に行きたいと思うものです。

勉強になりましたが、まだまだ学びが必要です。。。
観光にたずさわる方、一緒に盛り上げていきましょう!

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タイトル:新・観光立国論
著  者:デービッド・アトキンソン
発  行:2015年6月18日
発行所 :東洋経済新報社

■参考サイト
小西美術工藝社
http://www.konishi-da.jp/

日本の国宝を守る「伝説の英国人アナリスト」が提言
「観光立国を実現すれば雇用が生み出され経済成長ができる」 | DOL特別レポート | ダイヤモンド・オンライン
http://diamond.jp/articles/-/62131

明日の日本を支えるビジョン 首相官邸
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kanko_vision/pdf/honbun.pdf

RP さと、うま