2017年8月のさと、うま 日本人の叡智@磯田道史

-先達の言葉は海のごとく広く深い-

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本の帯にある言葉にヒットしました。
古文書に取り憑かれたように書物蔵にこもる著者が
前書きに書かれていた言葉がまたヒットしました。

人は必ず死ぬ。
しかし、言葉を遺すことはできる。
どんなに無名であってもどんなに不遇であっても、
人間が物事を真摯に思索し、それを言葉に遺してさえいれば、
それは後世の人々に伝わって、それが叡智となる。
この叡智の積み重なりが、その国に生きる人々の心を潤していくのではないか。

この書籍を発表するまでにトンを超える書籍を自転車で運び、
朝日新聞で2年間連載されたもののまとめがこの書籍とのこと。
叡智をネットで調べると「深遠な道理を知りうるすぐれた知恵」とヒットします。
著者自身が知りたかったから書いたとあるが、
言葉を残した者もさることながら、それをまとめあげて
共有してくださった著者もまた日本人の叡智そのものだと感じました。

1600年ころから平成のはじめまでの98人の叡智が
見開き2ページに集約されています。
二人の言葉をチョイスします。

■鍋島直茂
「当時、気味よきことは必ず後に悔やむことあるものなり。
わが気にいらぬことが、わがためになるものなり」

関が原の合戦で石田三成側につき、武功をあげたものの、
父である直茂より石田らの邪謀だと説かれます。
大活躍で気分の良かった息子勝茂だったが、気に入らない父の言葉に従い、
結果佐賀鍋島家を雄藩として存続させることができます。
自分の気にいらないもの、自分に無いもの、欠けたものが参考になることが多い。
人や物事を好き嫌いの感情で切り捨てないほうがよい、という戦国時代の言葉です。

■島津斉彬
「人財は一癖あるものの中に撰ぶべしとの論は、今の形勢には至当なり」

御存知の通り、幕末の薩摩藩主であり、
積極的に登用した西郷隆盛、大久保利通らが日本国政府の礎を築きました。
斉彬の人事思想ははっきりしており、十人が十人とも好む人物は
非常の時勢に対処できぬから登用せぬ。
一癖あるものでなければ用に立たない。一芸一能ある者を登用していった。
組織においては好人物が大抵登用されるが、
斉彬はその快適さをあえて切り捨てことをなしたといいます。

この書に出会い、多くの叡智に出会うことができました。
夢は生きているうちの目標であり、
志は死んだのちにどこかで知られるものだと、何かの書で読んだ記憶があります。
だからこそ志高く、夢を追いかける。
学び、活かし、超えるべく、短い人生にすべてを打ち込みます!

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タイトル:日本人の叡智
著  者:磯田道史
発  行:2011年4月20日