9月23日は秋分の日。
春分の日と同じく昼夜の時間がほぼ半々になる日であるが、夏至に向かう春分とは違い、秋分以降は冬至に向かい、昼間時間が短くなっていく。
ということは夜の時間が増し、気候的にも過ごしやすい季節から「秋の夜長」を楽しむには読書の秋!と。
日本人がかもし出す情緒の美しさに感動する。
そんな美しさ!つながりでチョイスした本書。
ビジネスの世界にも美しさが求められているのだ。
著者の山口周氏はコンサルティング系会社を経て独立研究者、著作家、パブリックスピーカーとしてご活躍されており、中川政七商店ほか社外取締役も務める。
自身は以前からTwitterもフォローしていて、芯をとらえた分かりやすい言葉でサラッっとつぶやくところがファン。
4年前に出版された書籍だが、予想以上の納得感で感化されまくる自分。
本書はタイトルにもある問いかけ「なぜ」を認識することが大切であるので一部抜粋をさせていただく。
〜グローバル企業が世界的に著名なアートスクールに幹部候補を送り込む、あるいはニューヨークやロンドンの知的専門職が、早朝のギャラリートークに参加するのは、虚仮威し(こけおどし)の教養を身につけるためではありません。彼らは極めて功利的な目的のために「美意識」を鍛えている。なぜなら、これまでのような「分析」「論理」「理性」に軸足をおいた経営、いわば「サイエンス重視の意思決定」では、今日のように複雑で不安定な世界においてビジネスの舵取りをすることはできない、ということをよくわかっているからです〜
なぜ「美意識」を鍛えるのか?
サイエンス重視の意思決定ではビジネスの舵取りが難しい時代になった。
それでアート要素を鍛えて(功利的かどうかはさておき)今後のビジネスの舵取りを行うということだ。
大切になるキーワードは「アート・サイエンス・クラフト」。
・アート(芸術・直感・感性)
・サイエンス(科学・論理・理性)
・クラフト(工芸・経験・本質)
本書はこの3つの要素がビジネスの世界において重要な役割を担っている。
以前ピックアップさせていただいた「デザイン思考」というとらえ方も、美意識(アート)に近い考え方である。
2015年10月のさと、うま 21世紀のビジネスにデザイン思考が必要な理由@佐宗邦威 | サンブログ
https://search.sunfrt.co.jp/blog/staff/yby/p1860/
2016年2月のさと、うま 里山を創生する「デザイン的思考」@岩佐十良 | サンブログ
https://search.sunfrt.co.jp/blog/staff/yby/p2838/
本書に戻る。
そもそも今主流のビジネスについて、私も感じていたことが明確すぎるくらい簡潔に表現されておりますゆえ抜粋させていただく。
〜今日、多くのビジネスパーソンが、論理的な思考力、理性的な判断力を高めるために努力しているわけですが、そのような努力の行き着く先は「他の人と同じ答えが出せる」という終着駅、つまりレッドオーシャンでしかありません。そしてまさしく、多くの企業はこのレッドオーシャンを勝ち抜くために、必死になって努力しているわけです・・・このような教育があまねく行き渡ったことによって発生しているのは、多くの人が正解に至る世界における「正解のコモディティ化」という問題です〜
昨今、デジタル化やDXへ向けてシステム導入をする話を拝聴する機会が多くなった。
現代のようにネットやクラウドサービスがない時代には、サーバも社員も超オンプレミス環境だから三者三様、同じものが出ること自体がマレだった。
現在はきめ細かいサービスが展開され、手間もかからず安価で簡単なサービスが生まれ、皆が移行していく。
結果、あらゆる企業のあらゆるベースはフォーマット化されている。
詳しくは本書に書かれているが、このような流れは著者も在籍されていたマッキンゼー&カンパニーが経験(クラフト)ベースのコンサルティングから、ファクトベース(事実に基づく)コンサルティングへ進化させ、それが時代の流れもありアカウンタビリティ(説明責任)重視の経営が主流となり、しいては論理・理性(サイエンス)重視のコンサルティングへ進化させたとある。
ファクトベース、アカウンタビリティ重視となれば、サイエンス&クラフトが重んじられることはすぐ理解できる。
3つの要素がさんすくみとなってはいるが、アートはアカウンタビリティに弱いため、どうしても最後には負けてしまうからだ。
アートを大切にして成功している企業例としては、スティーヴ・ジョブズ氏のApple、柳井正氏のUNIQLOが描かれている。
商品個体自体はすぐ真似されるが、美意識から生み出だされた商品の背景、プロセス、ドラマはすぐには真似できないし、共感を生み、ファンをつくる。
とはいえ、現在においては代表者自身がアートを理解し、大切な要素として代表権限レベルで取り組む以外に、美意識が経営判断にまで昇華されることは少ないのだろう。
さらに著者はこのようにも記しています。
〜もし経営における意思決定が徹頭徹尾、論理的かつ理性的に行われるべきなのであれば、それこそ経営コンセプトとビジネスケースを大量に記憶した人工知能にやらせればいい〜
たしかに「いつもといっしょで」はやりやすい。
ただしその「いつもといっしょで」も他社と同じフォーマット上で動いていることを認識しなくてはならない。
かっこいいデザインや技術が必要というわけではない。
アート・・・そうだ、自分の生き方を絵にすることからはじめてみよう。
遠慮せず真似や同調をするのでなく、自分らしさで創る。
これからはエビデンスのない要素が差別化を生む時代だ。
3つバランスは大切だけど心配はいらない、バランサーは100%近くにいるから。
他にも重要なファクト、心に刺さる言葉がいくつもありますが、それは是非お手にとって。
個人的になにか心がすっきりした本書。
一日で完読可!おすすめ!
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■参考サイト
山口周さん (@shu_yamaguchi) / Twitter
https://bit.ly/3u4muUm
タイトル:世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」
著 者:山口周
装 幀:アラン・チャン
発行日 :2017年7月20日初版1刷発行、2017年7月21日電子書籍版発行
発行所 :株式会社光文社