コンサルダイアリー第8号【修繕費と資本的支出のボーダーライン】

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コンサルティング室の税理士後藤です。

今回は、多くのお客様からお問い合わせをいただく『修繕の費用は一括で経費計上できるのか?それとも資本的支出として分割経費(減価償却費)にするのか?』という疑問についてお答えします。

ポイントは、①細かい修繕はなるべく修繕費に計上する、②資本的支出として計上した場合でも期間を圧縮する方法を利用して節税を図るの 2点です。

■修繕費・資本的支出の費用計上の違いと判断基準
そもそも、なぜ資本的支出と修繕費とに分けなければならないかといいますと、確定申告で経費計上する際、この2つを区分する必要があるためです。 修繕費は一括費用として計上できますが、資本的支出は、計上の際に減価償却資産となります。減価償却の期間は、国税庁が定める耐用年数表に従って、対象とするものの耐用年数と同じに設定しなければなりません。

例えば、RC造の建物で、外壁を吹き付け塗装からタイル張りにグレードアップ(費用300万円)した場合であれば、その費用は減価償却資産となり、建物の耐用年数と同じ47年で償却することになります。そうなると、毎年の減価償却費は、300万円÷47年=6.3万円。300万円もの支出に対して、毎年経費にできるのはたった数万円となってしまうのです。このように、費用の仕訳次第で節税効果には大きな差が発生します。

仕訳の判断基準は2つです。ひとつは「修繕の内容」 。修繕費とは、原状に復するための費用のこと。つまり、壊れたものを元に戻すための費用です。これに対し、資本的支出とは、資産価値を上げるための費用を指します。

具体例をあげますと、①修復を目的とした定期的な外壁塗装、②以前と同グレードの壁紙への張り替え、③設備機器が故障した際の修理、といった費用は修繕費に。一方で、①モルタル塗装をタイル張りへ変更、②壁紙をよりグレードの高いものへ変更、③事務所用だった部屋を居住用に改装、といった「資産価値を高める費用」は資本的支出となります。

もうひとつの判断基準が「金額」です。かかった費用が60万円未満、または前期末時点の建物取得価額の10%以下であれば修繕費として計上します。それ以上にかかった費用は、減価償却費として費用配分されます。

■毎年の経費を少しでも増やすには
このように、経費は「修繕内容と金額」で判断されるのですが、毎年の経費を増やす方法がないわけではありません。まず、20万円未満の修繕は税務上、すべて修繕費に計上できます。この際、修繕の内容は問われませんので、細かな修繕はすべて修繕費に計上すべきです。

また、減価償却費として計上する場合でも、「中古資産の減価償却費算出法」を使用することで減価償却期間の圧縮が可能です。

例えば、耐用年数超えの木造物件を外壁塗装する場合。木造物件は通常、耐用年数22年で減価償却しますが、この「中古資産の減価償却費算出法」を使用すると、耐用年数の全部を経過した資産は、その耐用年数の20%に相当する年数で減価償却が可能になります。
つまり22年×20%=4年(端数切捨)で償却できるのです。詳細は国税庁のHPをご参照ください。実際、新築の耐用年数(重量鉄骨造34年、RC造47年)で償却している人が多く見受けられます。利用しない手はないと思います。

不動産経営で必ず必要になる修繕やリフォーム。修繕費か資本的支出かで節税の幅が大きく変わる以上、しっかりと認識すべきです。また、確定申告を税理士に頼んでいる方は、費用の判断基準の確認を。明確な回答(どの工事をどう経費処理すべきか)が得られない場合は、違う税理士(セカンドオピニオン)への相談も検討すべきでしょう。
また、不明な点ございましたら、お気軽にご相談くださいませ。

コンサルティング室 ごとう