2020年8月のさと、うま シン・ニホン

本書はヤフーCSOの安宅和人氏が前著「イシューからはじめよ」に続く641ページの長作である。
内容はタイトルにあるように、シンニホン。
我が国はこれからどこに向かうのか、何をすべきか、武器は、問題は、人材は、マネーは・・・
AI、人工知能の世界観はもとより、失われてきた我が国の財政、人づくり、技術といった数々の資産への思い、そして提言、願い、希望、意志。

はじめにの章の一文が気持ちを引き締める。
ここが共感できるとはやく次のページをめくりたくなる、抜粋させていただく。

ほとんどの人は、あまりにも多くのことが変数として一気に動く目まぐるしさの中で、変化が落ち着く日を待っているようだ。
でも、残念ながらそんな日は来ない。
世界は昔も今もダイナミックに動いてきた。
これからもそうだ。
では、どうしたらいいのか。
僕の答えは、振り回される側に立つことをやめる、臭いものに蓋をすることはやめるということだ。
世の中には振り回す側と振り回される側しかない。
台風には目(eye)とよばれる中心があるが、目の中は無風だ。
青天すら見えるときがあるという。
その外でどれほどの暴風雨が起きていようとも。
僕ら一人ひとりは、望むと望まないとにかかわらず、これからの未来を生きていくことになる。
臭いものに蓋をしても隠し通すことはできない。
必ずその現実と向かい合う日は来る。
それも次世代ではない。
おそらく、問題のほとんどは僕らが生きているうちに顕在化する。
大切なのは、自らハンドルを握り、どうしたら希望の持てる未来になるのかを考え、できることから仕掛けていくことだ。
濁流だからと腰が引けたまま待つのではなく、ラフティングのように流れに乗ることを逆に楽しもうということだ。

前半はAI、データドブリン、人工知能といった内容が、図やグラフ、多くの参考文献を用いて氏の考え方とともに描かれていくが、前述のとおり、ものごとに対するアクション、深堀り力がとても参考になる。
例えば「知性の核心は知覚」という項。
とても参考になったので一部抜粋してご紹介させていただく。

「集めすぎと知りすぎ」
一定の量を超えると、新しく知覚する内容が少なくなってくるのだ。
情報のロングテール性から半ば仕方がないのであるが、この状態を「集め過ぎ」と言う。
頻度の低いテール部分の学習は専門家になる過程においてはある程度必要なことであるが、投下する時間というリソース自体がもっとも希少な資源なので ROI視点は持っておいて損はない。
この問題を、できれば若いうちに体感的に学習しておく価値は大きい。
さらに、得られる情報量を横軸に置き、「気づき」「アイデア」の量を縦軸に取るとどうなるか俯瞰し、考察したことがあるだろうか。
これは僕らのようないわゆる知的生産を行う現場の仕事をやっている人たちに顕著に起きる現象なのだが、典型的にはこうなる。
1:最初はそもそもわからない、理解できないことだらけでアイデアも何も浮かびようがない
2:理解できることが急激に増え、それと共に無限の質問が浮かぶ
3:質問に対する解が得られたり、解と出合ったりするたびに「それってこういうことなのか」「もしかしてこういうことが言えるのではないか」「あの話とこの話はつながり合っているのではないか」「だとするとこういう話があり得るのではないか」などの新しいアイデア(気づき)がどんどん湧いてくる
4:大半のことが既知のことで説明できるようになってくると共に、新しいアイデアや気づきが生まれることはあまりなくなってくる
これが「知り過ぎ」だ。
あるレベルを超えると、知識の増大はアイデアや気づきの増大に必ずしもつながらずむしろ負に働く。
この集め過ぎ、知り過ぎが起きていない段階の比較的若い人から新しいアイデアが生まれ、そこから未来が創られるのは半ば必然と言える。

なるほど。
マーケットや人材において、ミレニアル世代をターゲットとしている意味を納得する。
消費に満足する層のこれからと、これからの消費を担う層。
わたしたちはどこに向かって歩んでいる?
このように共感する項は盛りだくさんだ。
ぜひ手にとってほしい。

またある意味参考になったのは注釈の多さ=データ力である。
ある事象において、いかに有益な知識や情報を手に入れ、自分の力とできるか。
無数の情報にも有益無益、質の差がある。
皆が平等な時間を生きる中、どの情報をどうやって習得し、活かしていくか。
情報力の生かした方はとても大切な能力だ。
昔ばなし、自分の経験、古い情報を自慢気に話す人・・・。
特に不動産業は「知っててなんぼ」「千三つの業界」と言われ、今でもそのように語る方も少なくはない。
それがいいか悪いかという議論をする気もない。
ただ、世の中は「まずデータ化」され「IoTにより生かされ」それが「ビックデータとして保存され」「AIで未来価値を創る」というプロセスで世界が動いている中で、「私は」という一人称にいつまでもしがみついていては未来は見えない。
どこを大切にとらえ、どこに力を入れるべきなのかということを学ぶ。

そして最後に「風の谷」という希望が描かれている。
膨大なデータと知見、経験により記してきた本書の、集大成とも感じる「場」への希望が記されている。
コロナ禍がもたらしている不動産業界とのつながりも感じてしまう。
コンパクトシティとも違う近い将来に必要な新しい「場」としてとても参考になる。

その時、社長からがんばったで賞!でいただいた書籍であり、大切なこの書籍を思い出した。

都市は人類最高の発明である エドワード・グレイザー
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私の専攻は都市計画でもあったのでオスマンのパリ計画、コルビュジェの輝ける都市、後藤新平の帝都復興計画など、好き嫌い、良い悪いはさておき、特に近代の都市計画が今でも好きだ。

弊社の本拠地でもある東京は、都市圏ランキング世界一、都市圏人口密度も約4,700人/kmで世界トップクラス。
さらに我が国の都市圏人口密度は世界でも上位に位置しており、特に三大都市圏(東京圏、名古屋圏、大阪圏)に5割以上の人口が集中している。
国土は移動をともなう縦長の地形、そして国土の約3分2が森林である世界有数の森林大国であることも踏まえれば、点(都市)を線(道路、インフラ)でつなぎ合わせるタイプの都市国家が性に合う。
ちなみに都市ではなく国単位でみると、近くのシンガポール、香港、韓国、台湾のほうが断然高い。

そんな都市「東京」で、新型コロナウイルスと対峙している訳であるが、御存知の通り一番の回避策は「三密を防ぐ」。
これは、人類最高の発明である「都市」を再考せよ、という「とき」が訪れたと感じた。
都市は人や要素がみっちり詰まった空間が複雑に集約し、移動し、積層することで、これまでの平面的なまちづくりに付加価値をもたせたものだ。
とはいえ都市にも違いがあるため、すべての都市が密に弱いわけでもないだろう。
例えばスポーツやライブのような共感を得る体験と、満員電車ともまた違う密だろう。
本当に大切なものは何だろうか。

自然からくる災害や現象は、今を見直せ、という天の声だと私はとらえている。
本書も内容はコロナ前に発表されているが、書籍は2月に発売された。
これも天の声に導かれたのだと感じて止まない。
是非手に!

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■参考サイト
シン・ニホン | 安宅 和人 | TEDxTokyo
https://www.youtube.com/watch?v=G6ypXVO_Fm0

“シン・ニホン” AI×データ時代における 日本の再生と人材育成(財務総合政策研究所)
https://www.mof.go.jp/pri/research/conference/fy2017/inv2017_04_02.pdf

ニューロサイエンスとマーケティングの間 – Between Neuroscience and Marketing
https://kaz-ataka.hatenablog.com

タイトル:シン・ニホン
著  者:安宅 和人
発  行:2020年2月18日
発行所 :株式会社ニューズピックス

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