2020年9月のさと、うま フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義

不動産と自然界との関係は深い。
人間が長い時間を過ごすのが建物であるし、気候の変化や災害から身を守るのも建物だ。
その建物自体も自然を地盤にし、自然の化石資源がベースで築かれている。
自然と共存している事業だと改めて感じる。

では2020年の「自然」にともなう記憶をピックアップしてみよう。

新型コロナウイルス感染者数が世界中で3,200万人を超え、死者数も100万人近くまで推移。
→参考:コロナウイルス(COVID-19) – Google ニュース
https://news.google.com/covid19/map?hl=ja&gl=JP&ceid=JP%3Aja

カリフォルニアの山火事発生中、放火ではなく自然災害が原因の山火事だ。
→参考:Fire Map – NASA | LANCE | FIRMS
https://firms.modaps.eosdis.nasa.gov/map/#t:adv;d:2020-08-16..2020-09-15;l:street;@237.7,38.4,6z

今年6~8月の北半球の気温は過去の平均気温に比べ1.17度高く過去最高に。
→参考:今夏の北半球、史上最も暑かった 過去平均より1度高く:日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO63946900X10C20A9000000/

8月、日本国内で気温40度超えが連発、東京の猛暑日数(35度以上)も観測史上最多の11日、熱中症被害者も過去最多
→参考:気象庁|歴代全国ランキング
https://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/view/rankall08.php?prec_no=&block_no=

23区の熱中症死、8月最多195人・1日32人の日も…
→参考:読売新聞オンライン
https://www.yomiuri.co.jp/national/20200908-OYT1T50069/

人間目線で記憶をたどると、「被害」ばかりがクローズアップされてしまった。
自然との共存というとなんとなく「美しい・気持ちいい」というイメージだったのが、むしろ「怖い・厳しい」といったイメージに移っている感覚になった。

前置きが長くなったが、その自然との関係を頭にのこしつつ、いつものAmazonで検索し、出会った書籍が今月ご紹介する「フードテック革命」。

フードテックか…食べ物は自然の産物だし、テクノロジーって言ってもフードアプリ使っているからある程度分かるかな、という軽いインスピレーションでチョイスしたわけだが、読み終えて自身の無能さに落ち込むことになるとは…

「食」と言われればそれ自体は成熟している、と思うのが普通ではないだろうか。
自宅には保存、冷凍、炒め、蒸し、煮る、といった調理器具・家電があり、自宅までミールキットや食材を配達してくれるサービスもある。
数分加熱するだけで温かくおいしい冷凍品も品揃え豊富、シチュエーションにあわせた店や専門店もある。
Ubereatsやmenuといった宅配やテイクアウトも拡がり、それにあわせたゴーストキッチンも増えているし、昼夜別々の業態で運営をする店舗も増えている。

そう、食は日常にあふれかえっていて、誰もの大切なルーティン。
ルーティンだからこそ、逆にとらえると、変化に疎くなっているのだろう。

パッケージや産地、価格変更、糖分割合など、自身も随分と気になるが、もう一歩踏み込んだ内容はどうだろう。
「日本の食料自給率と輸入される遺伝子組み換え作物の割合」
「家畜と自然動物の割合」
「飼育そのものが環境破壊につながっている」
背景や現実を直視するには、自ら一歩歩み寄る必要があると、本書は私に教えを与えてくれた一冊だ。

まずはじめにフード業界の市場規模を知らずには語れない。
サブタイトルにもあるようい世界約700兆円という。
世界約80億人という人口、その人々が1年間に食事をする回数、その食事単価、さらには長寿や健康への志向、調理器具の進化、エンターテインメントとしての食、食材と食事のデリバリー、冷蔵と冷凍、農家や漁師もそうだろう、そして今回一番の興味となった代替市場といったテクノロジー分野。
ここまで「食」にかかわる世界、ビジネスが広いのかとぞっとする。

本書は「食」とテクノロジーの関係についても多く記載されているが、自身が一番気になったのは代替市場、「植物性プロテイン市場」である。
この分野はすでにビル・ゲイツ(マイクロソフト創業者)、リチャード・ブランソン(ヴァージン・グループ創業者)、セルゲイ・ブリン(Google共同創業者)、セリーナ・ウィリアムズ(プロテニスプレイヤー)、ケイティ・ペリー(歌手)に投資ファンドまでもが巨額の投資を行っている市場とあり、生きるすべての根源であるからこその興味関心の大きさに驚く。

念の為、人は糖質・脂質・タンパク質の三大栄養素によって成り立っている。
プロテインと聞くとボディビルダーが摂取しているイメージだが、プロテイン=タンパク質であり近年不足していると懸念されている三大栄養素のひとつだ。

そもそもなぜ、代替えの植物性プロテイン市場(植物性タンパク質)が注目されているのか。
それは次の文章を読んでほしい。
一部を抜粋させていただく。

どうやって世界100億人の胃袋を満たすのか?
…2050年、そう遠くない将来に、世界人口は97億人に達するという国連の予測がある。
世界の人口が爆発していく中で、現状のままの食料、特にプロテイン生産体制では持たない、という危機感がある。
貧困層が減り、中間層が増えれば、肉の生産量はアップする。
欧米と中国では主要なプロテイン供給源は食肉である。
牛は本来草食動物であるが飼料として多く使われているのは穀物のトウモロコシだし、1957年当時、鶏は孵化から57日目は905グラムだったのに対し、2005年では4202グラムだ。
こうした無理のある畜産の在り方は、感染症を発生させるリスクもはらむ。
さらに動物である以上、育てるためには飼料、水、空調管理などの膨大なエネルギーを必要とし、植物に比べて環境負荷は非常に高い。
地球上に暮らす人間全体では、1日に水200億リットル、食料10億トンを消費する。
それに対して地球上にいる家畜としての牛15億頭は、1日に1700億リットルの水、600億トンの食料が必要となる。
当然のことながら、肉を食するたびに生き物を食肉処理するという行為が必要になる…

植物性代替肉市場で注目のインポッシブルフーズ社のニック・ハラ氏の言葉も。
…今回のパンデミックで、食糧生産システムや食のインフラが極めて危ういバランスの上に成り立っていることを実感した人も少ないと思います。
過去40年間で、野生の哺乳類や鳥類の数は半分以上に減少しましたが、これは人間が肉や魚、乳製品を消費することに起因しています。
すでに世界の国土の約45%、利用可能な水の25%が畜産に利用している状況です。
にもかかわらず、国連は2050年までに肉の消費が70%増加すると予測しています。
今後、どこで育てるのでしょうか。
今こそ代替肉の役割だと思っています…

本書にも一文が紹介されているユヴァル・ノア・ハラリ氏のホモデウス上巻からも再度抜粋させていただく。
…世界には4万頭のライオンがいるのに対して、飼い猫は6億頭を数える。
アフリカ水牛は20万頭だが、家畜の牛は15億頭、ペンギンは5,000万羽だが、ニワトリは300億万羽に達する。
今日、世界の大型動物の9割以上が人間か家畜だ。
およそ40億年前に生命が誕生して以来、一つの種が単独で地球全体の生体環境を変えたことはなかった。
ホモ・サピエンスがゲームのルールを書き直してしまった。
前代未聞の形で徹底的に全地球の生態系を変えてのけたのだった…

なんということか、私は消化していただけで知識のなさに唖然とした。

これまで地球上で発生した数ある感染症で根絶されたものは天然痘のみであり、結核やインフルエンザによる国内死者数はいまでも毎年数千人にのぼっている。
新型コロナウイルスも根絶してくれると嬉しいが、その発生根源は私たちにもあるのだと、考える機会となった。

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■参考サイト
林野庁:日本では山火事はどの位発生しているの?
https://www.rinya.maff.go.jp/j/hogo/yamakaji/con_1.htm

農林水産省:日本の食料自給率
https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/012.html

タイトル:フードテック革命 世界700兆円の新産業 「食」の進化と再定義
著  者:田中宏隆、岡田亜希子、瀬川明
監  修:外村仁
発  行:2020年2月18日
発行所 :株式会社日経BP社

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