今月は「21世紀のビジネスにデザイン思考が必要な理由」に続き、デザイン思考本第2弾です。
本書は月刊誌「自遊人」を運営する岩佐氏が、
ふとしたきっかけで出会った古民家をめぐる「デザイン思考」が描かれています。
自遊人の事務所は2004年に東京日本橋から新潟県南魚沼市に移転。
それから10年を経たある日に頂いた電話が、デザイン的思考によって、
オープンから90%の稼働率を誇る「里山十帖」という宿へと生まれ変わる内容です。
データを重要視した従来型のマーケティング論でいけば
「宿の成功はあり得ない」という地域において、どうやって「あり得る」宿へと導いたのか。
いかに天国のような景観、溢れる自然、すばらしい総ケヤキ造りの家屋があったとしても、
成功はあり得ないと言われるマイナーな温泉地で成功をおさめることは並大抵の事ではないはずです。
そこには常識を覆すイノベーション「デザイン的思考」が大切です。
例えばプロモーションについて。
「・・・グランドオープンには一般的にはインターネットの予約サイト、テレビ、雑誌等で
プロモーションを行いますが、一切しませんでした。なぜなら私たちは、
不特定多数にプロモーションをかけるのではなく、いかに「共感の輪」を生むかを
第一に考えていたからです・・・」
例えばターゲットについて。
「・・・一般的に宿とは「お客様を限定する」という意識を持っていません。
もちろんそれなりにターゲットは明確なのですが、
「すべてのお客様に満足を」と考えていることがほとんど。
・・・つまりターゲット層は広く、しかも本来のターゲット層と違うお客様でも
満足してもらえるように、自分たちが変化する、それが日本の宿の特徴であり、
「おもてなし」だと考えられています。
しかし本来「もてなしの心」とは、茶の湯の主客同一という考え方からも分かるように、
亭主が客をどのようにもてなすか、ということ。
亭主、つまり宿がどのようなお客様に来て欲しいのか、もっと明確に打ち出すべきです・・・」
そしてデザイン的思考について。
「・・・デザイン的思考にもっとも重要なスタート地点は「データを見ないこと」であり、
とにかく「自分で体験してみる」ことから始める。
過去と未来のデータを元にどれくらいの資金が必要で、どのくらいの収益を見込めるか。
宿泊施設を検討しているのなら興味のある施設に泊まってみる。
ここまでは誰でもやることではないでしょうか。
デザイン的思考とは、これまでのマーケティング論とは違うところがここからです。
自分の興味と趣味に走らず、どれだけ俯瞰しながら体験できるか。
自分自身の中にいくつもの価値観を存在させて、
多重人格的に体験し自分の中で複数の検証を行う・・・」
グランドオープン時の稼働率はかなり厳しい数字だったそうですが、
共感下さるお客様がSNSで発信してくれたり、お帰りの際に次回の予約をしてくれる。
「共感」を求めたモノづくりは、数々の「デザイン的思考」により
生まれ変わったプロセスが分かりやすく紹介されています。
デザイン思考とは、かっこいいデザインを創ることでもなく、モノの価値を創ることでもありません。
共感し、リピートされる「コトの価値」を創ること。
そのためには、お客様を観察し、俯瞰的に多重人格で体験し、左脳で考えることが大事ですと!
私も負けないモノづくりにチャレンジしていきます!
#サンブログ #sunblog #書評 #ブックレビュー #里山を創生するデザイン的思考 #岩佐十良
タイトル:里山を創生する「デザイン的思考」
著 者:岩佐十良
発 行:2015年5月22日
発行所 :日本経済新聞出版社
■関連・参考サイト
自遊人
http://www.jiyujin.co.jp/
里山十帖
http://www.satoyama-jujo.com/
RP さと、うま