2016年11月のまえもり 七回死んだ男@西澤保彦

写真 (533x640)『ライフエクスペリエンス』 第6話

朝7時。今日は休みなのにいつも通り起きてしまった。
身体の疲れを感じているのでもっと寝て疲れを取りたかったが、
最近のあの「夢」が原因で二度寝することができない。
寝られないのだから仕方がないとういことで、
今までの不思議な体験を整理してみることにした。

初めて、あの「夢」を見たのが約1週間前。
はじめは、「ひかりお」というやつが本屋に来て、そいつの夢を見た。
その次は、ヤクザみたいな公務員「京左衛門」の夢。
その後、親友である松本。

しかしこの松本の体験が妙だった。
今まではただの夢だと思っていたのだが、
松本の夢が次の日まったく現実のものになっていたのだ。

つまりは、最初の「ひかりお」も2回目の「京左衛門」も
僕が確認できていないだけで、その人の人生の1日を一緒に体験していたことになる。

仮にこの夢を「ライフエクスペリエンス」と呼ぶことにしよう。
なんのきっかけかわからないが、僕は急にこの他人の人生の1日を、
しかも未来を一緒に経験できる体質になったらしい。

そういえば、なんか似たような本があったな。

確か本のタイトルは『七回死んだ男』。
西澤保彦さんが書いているミステリー小説だ。

そのときは帯にある
「挑戦者求む!!騙されきれないで読みきれますか?」という
本の帯のキャッチフレーズに心を惹かれて購入してしまったのだが、
読んでみるとどんどん小説の世界に引き込まれていく。

主人公は通称「キュータロー」。
彼だけが持っている特殊な体質のおかげで月に数回、
不定期に同じ日を9回体験するという、
いわゆる「反復落とし穴」の際に、祖父が殺されてしまう。

その反復落とし穴は、最終の9回目が終わると何事もなかったかのように次の日が始まる。
例えば、1月1日に反復落とし穴になったとすれば、
1月1が9回行われ、その後、1月2日がやってくるという具合だ。

その不思議な体質を駆使し、殺された祖父を助けるため、
主人公のキュータローが奔走する、というストーリー。

キュータローは、自身の体質を利用し、多くの仮説を立て、行動していく。
この自問自答の推理がたまらなく面白かったことを鮮明に覚えている。

また、西澤保彦さんの書き方も独特で、僕が言うのもなんだが、
語彙、情景が浮かんでくる表現力、文章のリズムが絶妙で、
2日で約350ページを読んでしまった。
もちろん仕事以外の時間を使って。

ところで、昨日のライフエクスペリエンスは、確かこはぎだったな。
あいつは確か、ケント・M・キースの「それでもなお、人を愛しなさい」を読んでいたな。
その後、妙に変な気持ちがして、ライフエクスペリエンスを自分ですぐに閉じちゃったけど、
本当はあの後何があったのだろう。
自然と今日1日を大切にしようと思った。
※1 当該ブックレビューは連載ものです。第1~5話を読まれたい方は、
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毎月1話ずつご一読いただければと思います。
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※2 このブックレビューはフィクションが記載されております。
実在の人物・団体とは一切関係ありません。

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タイトル:七回死んだ男
著者:西澤保彦
発行:1998年10月15日
発行所:株式会社講談社

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