2018年8月のこしいし@AIVS.教科書が読めないこどもたち

こんにちは。RPこしいしです。

今回の本は新井紀子著、「AIvs.教科書が読めないこどもたち」です。

本書著者は数学者として長年AIロボットの研究に携わっており、
2011年より「ロボットは東大に入れるか?」という人工知能プロジェクトを率いておりました。

約6年間の研究の結果、AIは東大には入れないが、偏差値57を超え、
高校3年生の上位20%に相当する成績で、
一部の有名私立大学に合格できるレベルにあることが分かりました。

しかしAIロボットは言葉を理解して文章を書くことができません。
例えば小論文なら教科書とウィキペディアを検索し、
文を取り出して組み合わせ最適化して書くだけですが、
たいていの学生が書くものより質が高いと言われています。

文章を読んで理解できないAIが人間に勝てるのか?
そう考えた時に著者は「中高生は読めているのか?」。
という一つの疑問を持ち始めました。

本書の前半ではAIの技術的な限界を、
後半では中高生の読解力の低下を指摘している2部構成となっております。

人間の一般的知能と同等レベルを示すような「真の意味でのAI」が
現在時点では不可能であると著者が考えるのは、
今の数学で表現できることに原理的な限界があるためだ。

今のところ、数学によって数式に置き換えることができるのは、
論理・統計・確率の3つだけ。
わたしたちの脳が認識する全てをこの3つだけに変換することはできません。

一方で後半では、
AIの力を試す上で開発した決して難しいとは思えない読解力テストで、
多くの学生が3分の1程度の正答率しかとれないことを明らかにしています。
読解力テストは中高生を対象に実施した結果のみ語られておりますが、
一体私たち大人の読解力はどうなんだろうか?
著者は読解力を向上させる明確な方法論を見出していないという結論に至っておりますが、
読解力なしでどうやって新しいスキルを身につけられるだろうか?
AIの将来性を語っている本かと思っておりましたが、
悪い意味で?将来の人間の知能が不安になる予想を裏切られる内容でした。

自身の業務が将来AIに乗っ取られてしまうような機械的なものになりたくないな、
と大変危機感を覚えました。

ぜひ、ご一読を。

RPこしいし

タイトル:AI vs.教科書が読めないこどもたち
著  者:新井紀子
発  行:2018年2月2日
発 行 所:東洋経済新報社