2016年11月のきくち ~ユーザーイノベーション~『消費者から始まるものづくりの未来』@小川 進

ユーザーイノベーション (480x640)

『モノ不足の時代』と言われた1970年代から、
現代は『モノ余りの時代』へ。そんな恵まれた時代になりました。

モノ不足の時代では、少品種の大量生産で原価を下げ、
マスメディアを通し全国に広告し販売するのが定石でしたが、
現在では『欲しいモノや食べたいモノだけを手に入れる』に変わり、
モノが売れない時代です。

しかしそんな時代でも、一つの工夫、考え方を変えるだけで
商品の価値を新たに生み出し、『売れるモノ』に変身できる。
本書は、そんな魔法のような事例が多く紹介されています。

例えば、建築現場に使われるマスキングテープ。
もともとは工業用途向けに販売されたマスキングテープは、
どこに貼っても簡単に剥がす事ができ、青、緑、黄色などの種類があり
作業用途によって色変え貼り付ける商品です。

このマスキングテープに対し、
消費者であるカフェの女性オーナーと女性常連客2人が目を付け、
商品の見えざる付加価値を見出します。
それは、マスキングテープを別の用途で新たな製品を提案し、企業を巻き込むものでした。

マスキングテープなら束で購入すれば1個30円程度です。
しかしカラーバリエーション増やし、デザインを変更して販売すると
1個150円の値段で販売する事ができました。

それだけでなく、工業用品としてではなく雑貨として使う楽しさを自主制作本で表現し、
雑貨用途に対しての需要があることを顕在化し、商品の価値を膨らませました。
消費者の閃きが企業を動かし用途革新の商品化を実現する一例です。

今までの開発・イノベーションとは「企業 ⇒ 消費者」だったものが、
「消費者からのイノベーション ⇒ 消費者への普及 ⇒ メーカーへの参入」という流れになり
メーカーが思いもつかない用途、商品に変化しました。
他にも消費者からのヒントを素に開発が進められ、市場に売り出されているも数多くあります。

アプリの使い方も考え方一つで、用途自体が変わります。
iPhoneの「Find iPhone」は、もともとの用途はGPS機能を利用し
iPhoneを紛失した際に所在を探し出す為のアプリでした。
しかし、ユーザーは紛失したiPhoneを探すのではなく、所有者を探していました。
探すという行為は変わりませんが、ニーズがiPhoneではなく
人探しに変化した事で新たなニーズを導き出し新たなアプリが登場したと言えます。

インターネット技術の進歩に伴い、広く消費者にイノベーションの道が開けました。
まさに『イノベーションの民主化』。

企業から生まれた製品やサービスを消費者たちの工夫で変化をもたらす。
そした新しい商品が生まれる。

自分がどうのように使いたいのか、どのようなモノがあると便利なのか考え、
工夫し続ける事で新たな商品作りのきっかけになり、新商品が生まれています。
商品開発は無限の可能性に満ち溢れています。

本書は消費者のイノベーションについての新製品、
サービス開発と経営のあり方が説かれています。

クックパッドや無印良品、初音ミク・・・。
たくさんの事例が紹介されていますので、
是非、ご一読ください。

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タイトル:ユーザーイノベーション~『消費者から始まるものづくりの未来』
著  者:小川 進
発  行:2013年10月日
発行所 :東洋経済新報社

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