2017年5月のさと、うま 新・所得倍増論@デービッド・アトキンソン

2017年5月のさと、うま 新・所得倍増論@デービッド・アトキンソン (451x640)

今月のレビューには、3月に「新・観光立国論」でレビューした
デービッド・アトキンソン氏の「新・所得倍増論」をピックアップ。

「新・観光立国論」のような観光革命は起きておりませんが、
JNTO(日本政府観光局)の報告によれば、
訪日外客数は3月末までの推計値で昨年比13.6%増とのことですので、
昨年約2,400万人ですから今年は2,726万人ほどの訪日外客数でしょうか。

このままいくと・・・
2018年 2,726万人?13%増=3,080万人
2019年 3,080万人?13%増=3,480万人
2020年 3,480万人?13%増=3,932万人

2020年に4,000万人の訪日外客数を目指す政府の読みは
近いところまでは推移しますね。
3年半後には日本国民の3分の1ほどの方がいらっしゃいます。

前回のレビューはこちらです。
2017年3月のさと、うま
新・観光立国論@デービッド・アトキンソン | サンブログ
https://search.sunfrt.co.jp/blog/staff/yby/p8495/


ということで今月は、日本をよく知る氏が日本の所得を客観的に考察し、
倍増するためのヒントが描かれた本書に注目しました。

まず、はじめに「日本は先進国でもっとも生産性が低く、
もっとも貧困率が高い」とありますが、ここが重要ポイントです。

それには2つの原因があり、
ひとつは世界ランクに酔いしれて、実態が見えていない傾向がある。
もうひとつはご周知のとおり日本の人口は減少しているということ。

一見すると世界3位のGDP総額、同じく世界第3位の製造業生産額、
世界4位の輸出額など、枚挙にいとまがありませんが、
これらすべては人口が多いことに深く関係しているのですが、
一人あたりに直すとGDPは世界27位、輸出額は44位だそうです。

イコールそれは、日本は高い技術や生産性をもっているのに、
人口が減り、生産性が上がっていないという事実との直面です。

日本は先進国であり、2016年度人口が1億2706万人の世界第10位ですから、
合計だけを見ていると大国に違いありませんが、
実際は多くの国に追い越されているということです。

それも筆者の言葉で言えば、成長しない理由は明らかであったのに、
本質を見ずに論点のずれた議論しかせず、
踏み切る気概を失っていたということになります。
日本人の楽観主義、厳しい言い方をすれば「甘い」とも表現されています。

ひとつの例として「大河ドラマ」があげられています。
NHKの朝ドラもそうかもしれません。
視聴率も比較的好調で、ドラマの舞台になれば観光客もたくさん増えていると
言われていますが、実は高齢者数の絶対値が増えているだけだと。

私も勘違いしているとはっとしました。

また人口激増時代の副産物に「計画性のなさ」「検証しない文化」
「マニュアル化」「融通が利かない」「縦割り」とあるそうです。

時代も制度も環境も変化し続けているのに、
今までが非常に順調だったので、変える必要性がない、
むしろ変化する人は変人扱いですから、
制度を変えることが難しい環境になれてしまっているともありました。

簡潔に言えば「過去の経験がいまだに重視」されているということでしょうか。

組織で言えば同級生が200万人以上いる団塊世代が定年をむかえつつも、
それより若い者たちは、なにをしようともまず多数決で勝ち目がありません。
戦うだけ無駄だと思われてもしかたありません。

私も昔話をしてしまうことがあります。
「あのときはな・・・」
「今の環境に甘えないように。先輩たちが頑張ってきたからこそ・・・」
過去の成功体験を断ち切り、現状維持は衰退だと説きながらも、
実は自分が過去の体験や経験ばかりを部下や後輩に伝えていないでしょうか。

とても良い意識改革ができる書籍です。
変革しなければ・・・ではなく、
心から変革しなければいけないと反省しました。
現状に浸らずに戦う事を誓います!!!
みなさんも是非お読み下さい!

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タイトル:新・所得倍増論
著  者:デービッド・アトキンソン
発  行:2016年12月22日
発行所 :東洋経済新報社

■参考サイト
訪日外客数(2017 年 3 月推計値)
http://www.jnto.go.jp/jpn/statistics/data_info_listing/pdf/170419_monthly.pdf

RP さと、うま