居抜きオフィス契約時の流れを解説!トラブルになりやすいポイントは?
目次
「オフィス移転の初期費用をできるだけ抑えたい」「1日でも早く新しいオフィスを稼働させたい」といったニーズから、前のテナントが使っていた内装設備やオフィス家具をそのまま引き継げる居抜きオフィスを検討している経営者・ご担当者も多いのではないでしょうか。
実際に居抜き物件には、内装工事費やデザイン費といったオフィス移転の初期費用を大きく節約できるというメリットがあります。一方で、入居するために結ぶ「居抜き契約」は通常のオフィス入居の契約とは内容が異なり、全体像を把握しないまま進めてしまうと、契約後に思わぬトラブルへ発展するケースもあります。
本記事では、居抜きオフィスへの移転を検討している企業様に向けて、事前に確認しておくべき居抜き契約の流れと注意点を分かりやすく解説します。
契約時にトラブルになりやすいポイントも具体的にまとめていますので、ぜひ参考にしてください。
目次
居抜き契約とは
居抜き契約とは、前のテナントが使用していた内装設備やオフィス家具を、新しいテナントがそのまま引き継いで使用することを前提にした契約です。通常のオフィス入居の契約とは少し内容が異なるため、まずは契約の基本的な仕組みから確認していきましょう。
居抜き契約に必要な「賃貸借契約」と「造作譲渡契約」
居抜きオフィスへ入居する際は、「賃貸借契約」と「造作譲渡契約」という2つの契約が必要になるのが一般的です。
これは、物件そのものを借りる相手と、内装設備を譲り受ける相手が異なるためです。賃貸借契約は賃貸物件を借りる際に結ぶ契約で、店舗やオフィス、一般のアパート・マンションの契約にも不可欠なものです。これは貸主(オーナー)と借主の間で締結します。
一方の造作譲渡契約とは、居抜き入居の際に譲り受ける内装設備やオフィス家具などの項目を明示した契約で、貸主ではなく前のテナントとの間で締結するものです。この契約を結ぶ場合は「譲渡項目書」を作成し、譲渡する設備や機材をリストにして明確にしておきます。
契約の相手先が2つに分かれる点は、居抜き契約ならではの特徴です。トラブルを未然に防ぐためにも、それぞれの契約内容をしっかりと確認しておきましょう。
居抜き契約の流れ
居抜き物件を契約する場合、どのような手続きが必要になるのでしょうか。ここでは、内見の申込みから物件の引き渡しまで、一連の流れを7つのステップに分けてご紹介します。
1.物件の内見と申込み
居抜き契約の第一歩は物件の内見ですが、候補物件が決まり次第、できるだけ早く動き出すことが重要です。
これは、居抜き物件の場合、募集期限が決まっているケースが多いためです。また、前のテナントが退去する前に内見を行う場合はタイミングによっては内見ができなかったり、内見可能な日時が限られていたりする場合もあります。 気になる物件を見つけたら、早めに仲介業者へ相談するようにしましょう。
2.ヒアリング/条件確認/物件や設備の調査
内見当日は広さや立地といった基本的な情報はもちろん、譲り受けられる設備の種類や状態に加え、譲り受けられないものも確認しておきましょう。
居抜き物件では、室内に残っているものがすべて引き継げるとは限らないためです。何が使えて何が使えないのかを整理しておくことで、入居後に必要となる追加の準備も見えてきます。
また、条件の良い物件は早いタイミングで契約が決まってしまうことが多く、居抜き物件は物件数が限られているため、入居希望者同士の競争も激しくなりがちです。仲介業者へのヒアリングでは、設備の状況とあわせて申込み状況も確認しておくと安心です。
この段階で把握した内容が、後の造作譲渡契約で作成する譲渡品リストや、追加費用を見積もる際の土台になります。気になる点は口頭で済ませず、その場でメモや写真に残しておきましょう。
3.貸主審査
申込みを済ませると、次に行われるのが貸主審査(入居にあたっての審査・与信)です。
これは、事業内容や収入状況、物件の使用目的などの情報をもとに、「借主がどのような人(企業)なのか」「信用してオフィスを貸すことができるか」などを調べるものです。
事業計画書の提出を求められた場合、スムーズに審査を進めるためにも、商品や商材の内容、従業員数、売り上げや収益見込みなどを含む情報を詳しく記載しておきましょう。
特に、設立から間もなく実績を示しにくいスタートアップ・ベンチャー企業にとっては、事業の将来性を丁寧に伝える資料づくりが審査通過の鍵になると言えるでしょう。
4.追加費用の確認
居抜き物件に備わっている設備をそのまま利用する場合でも、追加費用が発生するケースがある点には注意が必要です。
たとえば電気のアンペア数が不足していたり、通信設備が備わっていなかったりする場合もあります。このような場合、設備の追加が可能かを仲介業者へ確認し、必要に応じて設備工事を依頼する必要があります。追加工事はテナントの負担で行うケースが一般的です。
また仲介業者には、今回追加する設備を退去時に元の状態に戻す必要があるのかも一緒に確認しておきましょう。
初期費用を抑えるために居抜きオフィスを選んだつもりが、追加工事によって想定以上の出費になっては本末転倒です。譲り受ける設備だけでなく、不足する設備の工事費まで含めた総額で判断することをおすすめします。
5.造作譲渡契約
居抜き物件の細かな条件を確認して納得できたら、いよいよ契約手続きです。まずは譲渡品のリストと契約書を作成し、前のテナントとの間で直接造作譲渡契約を締結します。
契約にあたっては、特にトラブルに発展しやすい以下の点を重点的に確認しましょう。
- 設備の故障の有無(契約不適合責任=引き渡された設備に不具合があった場合の責任の所在)
- 機器のリース契約が終了しているか
- 譲渡品の中に什器が含まれる場合の内容や個数を明記したリスト
また造作譲渡契約においては、必ずしも全ての設備が無料で譲渡される訳ではありません。契約書や譲渡品リストは細かく確認し、契約に関する疑問は解決しておくことが重要です。
6.賃貸借契約
造作譲渡契約と並んで重要なのが、貸主(オーナー)との間で結ぶ賃貸借契約です。
一般的にはオーナーとテナントの間に仲介業者が入って契約を締結するケースが多く、賃料や原状回復などの細かな条件が定められます。
事業用として使用するオフィスや店舗物件の場合、営業時間や業種などが契約条件として細かく定められているケースもあります。契約内容に違反してしまうと違約金が発生したり、最悪の場合は退去を求められたりするため注意が必要です。
また、退去時にトラブルになりがちなのが原状回復(退去時に物件を借りた当時の状態へ戻すこと)についてです。賃貸借契約を交わす際には、どの範囲まで原状回復工事が求められるのか、細かな条件をあらかじめ確認しておきましょう。
7.物件の引き渡し
造作譲渡契約と賃貸借契約が完了したら、いよいよ物件の引き渡しを受けます。
引き渡し時には、物件内にある設備が問題なく動作するか、また譲渡リストにあるものがすべて揃っているかを必ず確認しましょう。
ここは、契約内容と実際の状態を照らし合わせられる最後の機会です。気になる点があれば、入居前のこのタイミングで解消しておくことが、入居後のトラブル防止につながります。
居抜き契約のメリット
続いて、特にスタートアップ・ベンチャー企業や中小企業に嬉しい、居抜きオフィスならではのメリットをご紹介します。
コストが抑えられる
居抜き契約の最大のメリットは、オフィス移転にかかる初期費用を抑えられることです。
これは、前のテナントが使用していた内装設備やオフィス家具をそのまま引き継げるためです。希望条件に合う物件が見つかれば、通常であれば大きな負担となる内装工事やオフィス家具の購入を、最低限のコストで済ませることができます。
資金が限られていたり、メンバーの増加によって短期間でオフィス移転をする可能性があったりするスタートアップ企業やベンチャー企業には、こうしたオフィス移転の初期費用を節約できる点が大きなメリットになります。
内装やオフィス家具にかかるはずだった資金を、そのまま採用や開発といった事業投資に振り向けられる点は、成長スピードを重視する企業様にとって大きな武器になると言えるでしょう。
新オフィス稼働までの期間を短縮できる
居抜き契約のもう一つのメリットは、新しいオフィスが稼働するまでの期間を短縮できる点です。
居抜き契約であればすでに内装設備やオフィス家具が備え付けられており、電話回線やネットワークの工事を行えばすぐに入居できる物件も少なくありません。
内装工事のためにスケジュールを何ヶ月も確保する必要がないため、移転の意思決定から業務開始までの期間を短くしやすくなります。担当者が他業務と兼任していることの多い少人数チームにとっては、工事の打ち合わせにかかる手間そのものを減らせる点も見逃せません。
1日でも早く開業したいスタートアップ企業の経営者や、現在のオフィスが手狭で早く移転したい企業のご担当者にとって、居抜き契約のオフィスは理想的な物件といえます。
居抜き契約でトラブルになりやすいポイント
多くのメリットがある一方で、居抜き契約には注意しなければならないポイントも存在します。ここでは、実際によくあるトラブルの事例を交えながら、契約前に押さえておきたい点を解説します。
譲り受ける設備の状態とリース契約の有無
居抜きオフィスでまず確認したいのが、残されている設備が本当にそのまま使えるのかどうかという点です。
居抜き契約のオフィスの場合、デスクやチェア、キャビネット、コピー機などがそのまま利用できるケースがありますが、その際には次のようなトラブルも起こり得ます。
よくあるトラブル例
- キャビネットの鍵が見つからず、利用できなかった
- 使えると思っていたコピー機が故障していた
- 機器のリース契約が残っており、入居後もオフィスにリース料金の請求書が届いた
- レンタル契約が満了を迎え、設備が回収されてしまった
そのため造作譲渡契約の際には、設備やオフィス家具の状態をはじめ、リースやレンタル対象の機器や設備が残っていないかまで入念に確認しておきましょう。
契約条件は口頭ではなく書面に残す
設備や内装の状態を確認する際は、口頭の説明だけで済ませず、必ず書面でやり取りすることが大切です。
契約時に状態を尋ねると、担当者によっては「きれいな状態です」「問題なく使用できます」といった返答をもらうことがあります。しかし、一口に「きれいな状態」といっても、感じ方は人それぞれ。新品同様の状態なのか、多少使用感はあるものの実務には問題ない程度なのかなど、口頭での説明だけではトラブルに発展する可能性があります。
そのため造作譲渡契約や賃貸借契約を結ぶ際は、譲渡する設備や機材の「数」「コンディション」「価格」を客観的に明記してもらうほか、賃貸借契約の書類には原状回復の条件を明記してもらいましょう。
書面に残しておけば、万が一認識の相違があった際にも、契約時の取り決めに立ち返って話し合うことができます。特に、法務の専任担当を置きにくいスタートアップ・ベンチャー企業にとっては、書面化そのものが最も確実で手間のかからないリスク対策になると言えるでしょう。
居抜き契約のお困りごとも、ぜひご相談ください
本記事では、居抜き契約の流れやトラブルになりやすいポイントについて解説しました。
居抜きオフィスが初期費用とスピードの両面で大きなメリットを持つ一方、「賃貸借契約」と「造作譲渡契約」という2つの契約を正しく理解しておく必要があることをご理解いただけたかと思います。
特に、限られた資金と人員で移転を進めるスタートアップ・ベンチャー企業にとって、契約後に発覚する設備の不具合や想定外の追加費用は大きな負担となり得ます。契約後に思いもよらないトラブルに見舞われないために、そして居抜き物件のメリットを最大限に活かすために、あらかじめ契約の流れや注意点を確認して備えておきましょう。
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記事監修者
菅野 勇人
宅地建物取引士
セットアップオフィスから一般的なオフィスまで、多種多様なオフィスビルの魅力や特徴を熟知したオフィス物件マニア。
スタートアップ企業の移転支援経験が多く、そこで得た知見を活かし、お客様の理想のオフィス探しを全力でサポートいたします。